toggle
2022-10-15

JOSA OCEAN BOOT CAMP参加レポート

Ocean Boot Campがついにキックオフしました! 愛知県ラグナマリーナから、北海道函館港を目指す初めてのOcen Boot Campの様子を、参加した青森セーリングクラブの横山明典さんにレポートしてもらいました。

文・写真:青森セーリングクラブ 横山明典 氏


Go Sailing

Ocean Boot Campスタート!

■ラグナマリーナ出航まで

2022年9月17日、〈貴帆〉(CLASS40 POGO40)豊橋到着。北田オーナーはじめ私を含む〈貴帆〉にかかわる皆が待ちわびた日が訪れた。

到着した日からあわただしく通関手続き、艤装、航海計器の調整など日本の海で外洋レースの普及、外洋レーサーの育成を目的とした「OCEAN BOOT CAMP」実施に向け作業に追われた。

CAMPスタートは10/1から10/9、蒲郡ラグナマリーナを出航し青森・函館までのルートを予定している。北田オーナーと私のホームグラウンドである青森の陸奥湾でこの〈貴帆〉を走らせ、我が青森セーリングクラブの会員にも大洋で活動してきた純外洋レース艇を見てもらうまたとない機会にCAMP参加を決めたときからココロオドル思いであった。

船の整備は細部にわたり、大詰めのインマルサットの開通、航海計器システムの調整に時間を要し最終完了が10/1となり1日出航が遅れることとなった。

Kiho at Laguna Marina

出航を待つ〈貴帆〉

■ラグナマリーナ出航

10/2、9時15分ポンツーンのもやいを解いた、いよいよ青森・函館までの「OCEAN BOOT CAMP」の始まりである。

私はこれまで一般的なプロダクション艇にしか乗ったことはなくロングレースも2012沖縄~東海ヨットレースの720NM(貴帆 X41)が最長である。今回のCAMPもほぼ沖縄~東海と同じくらいの距離ではあるが、乗る船がこれまで経験のない車で例えるとWRCラリーカーのような純レーサーである。(トイレもない…。)文字通り新兵の気構え、修行の思いをあらためて自分にいいきかせた。

今回、北田さんにお声がけいただいたいきさつは、2012にチーム青森で参加した沖縄~東海レースに参加させていただいた縁によるもので、三河湾を伊良湖マティス通過するまでの間、当時の沖縄~東海レース嵐の1週間、そして三河湾に入ってからラグナまでの最後レグのしびれるような長さを思い出しなつかしさに浸っていた。

■いよいよ外洋へ(CAMP1日目)

13時伊良湖マティス通過、TWA323、TWS3.3、BS4.3、SOG6.1。

フルメイン機帆走の状態で大島に向け気温28℃のなかゆったりとした時間が流れている。こののぼりの風が後ろに回り始めるのがいつになるのか、〈貴帆〉がジェネカーを展開し暴力的なスピードで走り始めるはいつになるのかワクワクしっぱなしである。しかしその願いもむなしく延々とクローズの呪縛は解かれないのであった、夜になりTWS25まで上がりうねりも大きくなりソレントからステイスルへと交換。フォアデッキで交換作業している北田さんは流石に手慣れたものである、一方の私は北田さんから指示されたハリヤード・シートを暗闇の中探し出し、ありったけの力を振り絞りテ―リング、青森につくころまでにはスムースに作業できるようになりたいと心に誓う。

Cockpit

〈貴帆〉のコクピットは質実剛健

■CAMP2日目

夜が明けても一向に風は前からである。昨日もそうであったがやたらと流木が多い。中には衝突すると損傷は避けられないような大木もちらほら流れている。日中は目視で避けることができるが、夜になると全く見えず幾度となくゴツン!という嫌な音を耳にした。ハル、ラダーに損傷がないことを祈るばかりである。

10/3、13時、神津島が見える。ヘディング120°、TWA66°、AWA48°、SOG4.9、気温26℃。

神津島の先に三宅島が見える、三宅島の西側をかすめ房総半島へ寄せ北上するルートを狙う。そうなるといよいよジェネカーの出番か、ドキドキする。

日が暮れ私がワッチオフからデッキへ出たところ北田さんから基幹となるシステムダウン、オートパイロット不調との連絡あり。デプスはそれ以前から表示が出たり出なかったりだったが、いよいよ航海に重要な計器本体もトラブルに見舞われた。

今回、日本での活動に当たりシステムを入替えアップデートしたらしい。出航までにその調整に時間を要し万全を期したつもりであったが、やはり何かしら不具合があるらしい。

北田さんから最終決断が下される。このまま北上したとしても航海計器が不調のままでは悪化する天候の中にあっては危険が伴うこと、また避港するにしてもデプスが表示されないとそれもままならいこと。以上によりCAMPはこれで中断し浦賀ヴェラシスマリーナへ入港し計器の整備、ハル・ラダー等のチェックを行うこととした。

Main Sail

〈貴帆〉日本の海にデビュー

■CAMP3日目

夜が明け始めるころ房総半島をかわし横須賀の灯りが確認できる。風が弱い中メインワンポイントリーフの機帆走で浦賀ヴェラシスへ進路をとる。それにしても横須賀基地が近いとはいえ自衛艦の往来がやたらと多い。

夜が完全に明け気持ちの良い太陽の光が差してきた、周りは多くの漁船が操業中でその間を縫ってマリーナへ最後のアプローチをした。

本来であれば今頃は追手の風で茨城沖あたりを爆走中か?また2日後くらいには宮城・岩手沖で雨に当たり真上りの風で地獄を味わっているか?様々な思いをめぐらせながら6時30分浦賀ヴェラシスマリーナ入港。OCEAN BOOT CAMPを終えた。

船の係留作業をしていた時、北田さんが叫んだ、「北朝鮮のミサイルが日本上空を横断し太平洋沖に墜落したらしい!」

なるほど自衛艦が多数行き来していたのはそうゆうことだったのか、それにしてもつい数時間前までわれわれがいた太平洋沖にミサイルが墜落とは…。ニュースでは見聞きしていたがこれほど身近に迫ると恐怖を感じた。計器不調だけではなくミサイル事件もあるなかで、不安要素を抱えたままでの航海では事故につながりかねない、北田さんの判断は賢明であったと思う。

Sunrise

Ocean Boot Campからのご褒美

■OCEAN BOOT CAMP~プロローグ~を終えて

今回、OCEAN BOOT CAMPは当初の予定を完遂することはできませんでしたが、青森のド田舎に住む私が北田オーナーからチャンスをいただき、CAMPに参加でき、〈貴帆〉の最新鋭の艤装システムやポテンシャルの一端を垣間見ることができたことは何事にも代えがたい経験をさせていただいたものと感謝申し上げます。

今後〈貴帆〉が日本にいる限り乗船できる機会はあるかもしれません。またいつの日かOCEAN BOOT CAMPのリベンジを果たし、胸を張って大洋に出航できるよう多岐にわたる知識と技術を身につけたいと思います。

■日本において外洋レース参加を夢見る皆様へ

〈貴帆〉、北田オーナーがフランスでの活動で培ったノウハウを携え日本へ帰って来てくれたことはこの上ないチャンスです、ぜひOCEAN BOOT CAMPへ参加し人生における選択肢を広げていただき、そこで経験したことを広くフィードバックしていただきたいと思います。

いつか来るその日を夢見て。

PS:今回のCAMPでの成果のひとつとして禁煙に踏み切ることができました、10/11現在継続中です。

ほかの記事を読む