守屋有紗のRoad to Ocean Sailor vol.11【フランスでの活動についての振り返り】
こんにちは、守屋有紗です。
今日は2ヶ月間のフランスでの活動についての振り返りをしたいと思います。
ごく普通の会社員だった私がフランスに渡ることになった経緯から、JOSAって何?というところまで、詳しくお伝えできたらと思います。
シリーズ最後の記事になります。
日本でヨットをやっている方には、知っておいて損はない情報も入っております。是非ご覧ください!
〈内容〉
1.フランスで活動することになった経緯
私は、2ヶ月前まで普通の会社員でした。総合電機メーカーで、半導体の営業の仕事をしていました。
ヨットに乗れるのは週末のみ。
それがなぜ突然フランスに行くことになったのか?
2024年のパリオリンピックで新種目として採用予定だった、男女オフショアダブルスに向けて活動をすることになったためです。
始まりは今年2021年の2月。
ご縁があってJOSA代表の北田さんと知り合うことができました。
自分のスキルアップのため、ヨットに関して色々と挑戦している中での出会いでした。
でもその時は、外洋に興味はあるけど危険で怖い、ましてやダブルハンド未経験の私にはまだ無理だという気持ちが大きくありました。
その気持ちが大きく変わったのは、下の2つに参加してからです。
(1) 大阪湾でのダブルハンドトレーニング(2021年2月)
(1)は、大阪北港のバルトロメ艇をお借りしてのトレーニングです。
北田さんと初めてお会いし、ダブルハンドの練習を実施しました。
フルクルーとは違い、全ての動作を1人または2人で行わないといけないダブルハンドは、より深くその艇の理解が必要になると知り、ダブルハンドの魅力を感じることができました。
その時のブログはこちら。
(2)は、海上での非常時に備えた対応を学ぶ、3日間のシーサバイバルトレーニングです。
JOSAがJSAFの認証を獲得し、今年から日本でも開講することができるようになりました。
このトレーニングは、海外の外洋レースへの出場資格の1つとなることも多く(フルクルーレースでは乗員の何%以上等と規定がある)、ヨーロッパやオーストラリア等で開講されている世界共通の資格となります。
しかし、これまで日本では実施できる機関がなく、この資格を得るためには、海外に行って受講するしかありませんでした。
それをJOSAが、5年以上の歳月をかけ、フランスの機関とのやりとり、トレーニング施設の準備、テキストや講座の日本語訳、資格授与の手続き等により、フランスと同じ内容の講座を日本で日本語で実施することを可能としたのです。
私は、2021年3月に北九州にて人数限定のトライアルコースに参加させていただきました。
内容は、フランス本場と同じで、World Sailingの正式な認定資格も得られるものでした。
私自身は、実はそれまでこの資格の存在を知らず、受講を迷っているほどでした。
それが、このコースを受講してから、外洋に対する気持ちが大きく変わり、今ではあの時受けて本当によかったと感じています。
参加をする前は、外洋に対して、漠然とした不安や恐怖がありました。怖くて危ないというイメージです。
それが、このコースで海上でのあらゆる事故を想定し、その備えや対処法を学んだことで、今まで感じていた漠然とした不安・恐怖は、「知らない」ということから来るものだということだということに気付きました。
しっかりと危険を想定し、備えることで、恐怖を減らすことができると分かり、外洋に挑戦してみたいという気持ちが強くなりました。
これらの、(1)大阪湾ダブルハンドトレーニングと (2)シーサバイバルトレーニングの受講、が外洋ダブルスを目指す大きなきっかけとなりました。
ただそれでも、会社を辞めて挑戦しようと決断するまでには多くの葛藤がありました。自分が何をしてたいのか、どういう風に生きていきたいのか、本当に色々と考えました。
そして、悩んだ末、5月に会社を辞める決意をし、翌月の6月にはフランスに渡航をしていました。
大企業での安定した生活、今後のキャリアを捨て、現時点では何の保証もないヨットの世界に飛び込む。
私の人生にとっては、大きな決断となりました。
私のことを思って、たくさんの人が反対も心配もしてくれました。でも、自分で決めたことだから、これで失敗したとしても後悔はしない、と最後は自分の気持ちを信じて決断しました。
決めた後は、もう迷いなく前進するのみ。
自身の学びのため、目の前のことに全力で取り組もう、という気持ちでした。
そのようにして始まった、フランスでのキャンペーン。
当初は2024年のパリオリンピックを目指す計画が、2021年4-5月頃にはパリ五輪での外洋ダブルスの種目が採用取り消しの方向となり、6月には取り消しが正式決定されました。
それでも、外洋ダブルスのワールドカップは毎年開催されるとのことで、それを目指してフランスにてトレーニングを実施することになりました。
2. 2ヶ月間のフランスの活動で学んだこと
当初、今回のフランスでのキャンペーンは、3つのイベントを予定していました。
(1)Class40(貴帆)、Figaro3での外洋トレーニング(6月末〜8月頭)
(2)Rolex Fastnet Raceへの参戦(8月前半)
(3)外洋ダブルスのワールドカップへの参戦(8月後半〜9月末)
(1)Class40(貴帆)、Figaro3での外洋トレーニング(6月末〜8月頭)
貴帆の北田オーナーに、1ヶ月半かけて、外洋の基礎を指導していただきました。
これまでRoad to Ocean Sailor と題してブログを公開してもらっていたように、外洋レースに出場するために必要な、様々な準備や練習を実施しました。
1ヶ月半、毎日が本当に刺激的で、日本にいる時には想像もできなかった、フランスのヨットの世界に驚きの連続でした。恵まれた環境で、毎日ヨットのことを勉強でき、本当に充実した日々を過ごすことができました。
また、現地では多くの出会いがあり、様々な生き方、考え方に触れたことで、これまでの自分の中の常識がどんどん更新されていくような気持ちになりました。
このトレーニング期間は、私のヨットの知識・技術に関しても、自分の人生にとっても、とても重要な時間となったと感じています。
詳しくは、ブログ:守屋有紗のRoad to Ocean Sailor にて。
(2)Rolex Fastnet Raceへの参戦(8月前半)
ファストネットレースは、約350艇が参加する、世界最大級のヨットレース。
私にとっては、初めての海外での本格的な外洋レースで、とても大きな挑戦となりました。
イギリスのカウズからスタートし、アイルランド沖のファストネットロックを回り、フランスでフィニッシュする、695マイル。
外洋レースの厳しさ、そして楽しさを体感し、同時に自分の技術不足に悔しさを感じたレースとなりました。
詳しくは、Road to Ocean Sailor Vol.10にて。
(3) 外洋ダブルスのワールドカップへの参戦(8月後半〜9月末)
残念ながら、コロナウイルスの感染拡大により、参戦を取りやめることになりました。
正直、1ヶ月間イタリアを回るツアーレースは、私の技術を上げられる絶好の機会だと楽しみにしていたため、残念に思う気持ちも大きかったです。
ただ、当初の予定を全て実施することはできなかったものの、この状況下でここまで経験できたことだけで奇跡のようなことだと、本当にありがたく感じました。
このように、今回のフランスのキャンペーンでは、本当に様々な経験をすることができ、日本にいては得られなかった多くの学びを得ることができました。
このような貴重な経験をさせてもらえたこと、サポートいただいた皆様に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
3.JOSAでできること
JOSAという組織については、このブログを通して知っていただけた方も多いかと思います。
JOSAは、外洋セーラーを目指す者をサポートする目的で発足されました。だけど、外洋だけじゃないんです。
ここでは、JOSAでは何ができるのか?JOSAにどうやったら関われるのか?についてお伝えしたいと思います。
実は、日本でヨットをやっている方には、とても身近で、皆さん誰もが関わることのできる組織だということを知ってもらえたらと思います。
〈JOSAでできること〉
(1) オーシャンレース・長距離航海にチャレンジするための情報やトレーニング等の仕組みに参加できる。
(2) JOSAを通じてヨットライフの充実を図り、また会員同士の親睦を深めることができる。
(3) JOSA会員向け共通サービス(団体保険への加入、JOSA主催イベント・講習会の参加など)が受けることができる。
(1) オーシャンレース・長距離航海にチャレンジするための情報やトレーニング等の仕組みに参加できる。
JOSAは現在、オーシャンレースや長距離航海などの外洋に挑戦するセーラーを支援する仕組み作りを行っています。
その仕組みの一つが、今回の私のように、外洋に挑戦したいという意思を持ったセーラーを支援するチャレンジ会員です。
チャレンジ会員になるには、審査が必要で動機や目的等を審査後、チャレンジするセーラーそれぞれに合ったサポート計画を立て、その目標達成に必要な知識・トレーニング・経験・その他の支援を受けることができます。
また、セーラーを応援したい誰もが、JOSAを通してセーラーの挑戦を支援することも可能になります。それが、賛助会員と呼ばれるサポーター制度です。賛助会員には、法人・団体などのオフィシャルサポーターと、個人のプチサポーターがあります。
支援を受けたいセーラー、そしてそれを支援する方々が繋がることができる、プラットフォームと言えるのではないかと思います。
(2)JOSAを通じてヨットライフの充実を図り、また会員同士の親睦を深めることができる。
こちらは現在準備中ですが、S N S等を使い日本全国に散らばる外洋経験豊富な先輩方からこれからヨットライフを楽しもうとする若いセーラーまで、ヨットを愛する人たちの親睦を深めることができるプラットフォームの構築を進めています。
日本のヨット界で経験知の継承ができれば素晴らしいことだと思います。
(3)JOSA会員向け共通サービス(団体保険への加入、JOSA主催イベント・講習会の参加など)が受けることができる。
JOSAの会員には、前述したチャレンジ会員と一般会員、法人会員、賛助会員(サポーター)の4種類があります。一般会員は、JOSA会員限定のヨット団体保険に加入することができます。自動車保険に入らずに車を運転することがないように、ヨットも保険が必要になります。
現在、日本全国のクルーザー、ディンギーを含めたヨットオーナーが500人以上加入しています。一般会員はどなたでも会員になることができます。また法人・クラブなどの団体で加入できる法人会員、そして前述したJOSAの活動目的にサポーターとしてご支援いただく賛助会員となります。ご興味がある方は下記リンクをご確認ください。
https://www.josa.jp/membership/
既出の通り、JOSAはWorld Sailingから認定を受けたシーサバイバルトレーニングを開講できる日本で唯一の機関となりました。
今後はJ S A F主催で一年に複数回開催できるよう、準備を進めています。残念ながらコロナウイルス感染拡大により中止となってしまった6月の回では、お知らせを公開してすぐに定員を遥かに上回る申し込みがあったとのこと。
このコースは、外洋レースの出場資格を得るためだけでなく、普段のインショアレースやクルージングを安全に行うためにも、非常に役立つ内容となっており、クルーザーヨットに乗る方は全員知っておくべき知識なのではないかと思う程の重要な内容になっています。
今、多くのセーラーから注目を集めているこの画期的な取り組みを、是非皆さんにも引き続きチェックしてもらえたらと思います。
直近では、2022年の年初に1回、冬に1回の開講を予定しているとのことです。詳細は下記リンクをご確認ください。
https://www.josa.jp/seasurvival/
以上(1)〜(3)のように、JOSAでは、日本の外洋セーラー、そしてヨット界を盛り上げるため、様々な活動を行なっています。
そして、そのどれもが皆さんが身近に関わることのできる内容となっています。
日本のヨット界を盛り上げたいと、みんなが思っていてもなかなかできないことを、JOSAという組織を通して、多くの人の力を繋ぎ合わせることにより、達成できるのではないかと思っています。
JOSAに興味を持ってくださった方は、今後もJOSAの公式Facebookやホームページを通して、活動をチェックしていただければと思います。
JOSA公式facebookページ:https://www.facebook.com/JOSA.OCEAN
また、ご不明点やご質問、アイデア等がございましたら、お気軽にお問い合わせ欄からご連絡いただければと思います。
皆様、最後まで読んでいただきありがとうございました。
こちらの記事をもって、私のシリーズは終わりとなります。
私の挑戦をサポートいただいた皆様、そして温かく見守ってくださった皆様、本当にありがとうございました。
今回、JOSAを通して支援いただいた外洋セーラーへの第一歩を、大切にし、今後の活動へと活かしていきたいと思います。
守屋有紗(もりや ありさ)
1996年生まれ
大阪府大阪市在住
【活動記録】
このシリーズの全ての記事は、下記リンクでご確認いただけます。
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