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2018-09-08

【Normandy Channel Race 2018 回想記】

みなさん、こんにちは!
陸上班の清水がお伝えいたします。

5月に開催されたNormandy Channel Raceですが、貴帆にとってはヨーロッパ参戦レースで初めてのリタイヤとなりました。2017年に続きJORAサポートによる貴帆キャンペーン第2回目の参戦でしたが、皆様に現地の様子をお伝え出来ぬまま9月になってしまいました。
今回のリタイヤについて北田スキッパーより回想レポートが届きましたのでご覧ください。
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記:北田 浩スキッパー
写真:JORA事務局

まずNormandy Channel Race 2018を終えてあっという間に2ヶ月が過ぎました。
今年のNormandy Channel Raceは「初」のリタイヤということで終わりました。
なぜリタイヤに至ったかという事を後でお伝えするという事だったのですが、日本に帰国し仕事に追われ失念しておりましたので、記憶が薄れてしまわない早いうちに、お伝えしておこうと思います。

まず、スタート場面に至っては非常に良かったと思っています。ヨーロッパでレースを初めて3年目のシーズンですが、多分、今まで出場したレースで最も良かったスタートなのではないかと思います。NCRというのはスタート直後にスタート海面でマークレースをやるような短距離レースの要素もあり、スタート直後のクルーワーク、特にセールチェンジ等の練習をダブルハンドでやっていなかったので、セールチェンジの度に前の船に置いていかれて、スタート海面から離れた時にはほぼ最下位までに落ちてしまいました。その時の感覚は、スタート海面から出たタイミングで3日分仕事をしたくらい疲れたことが思い出されます。その後、なんのトラブルもなく順調に帆走って行ったのですが、英仏海峡を渡るレグで微風帯に捕まりました。微風と英仏海峡の潮流でかなり難しい状況ではありましたが、たまたま海峡の潮については地元の津軽海峡での経験値があったので、渡り切るための作戦はとても上手くいきました。先に帆走っている船は我々にとっては「テルテール」状態で、風の状況と潮の状況を見ながらごぼう抜きするチャンスに恵まれました。ワイト島に到着した時にはとても良い順位までUPしていました。ワイト島に着いたところでほとんど風がなくなり、これまた潮に翻弄され、せっかく追いついたのに全く団子状態になってしまいました。いつでもアンカーを使えるよう準備し、あとはみんな仲良く団子状態で風が吹き出すのを待ちました。そして夕方になった頃から風が吹き出し、そこからが非常に面白い展開になりました。各艇「テールツーノーズ」の状態でまさしく100メートル競争のようなレースがそこで繰り広げられました。私にとって一番面白かったのは、Vincent Riou(ヴァンサン・リュー)がオマーンセールのClass40艇で参加していた事です。ヴァンサンは誰もがわかるようにVendée Globeも優勝経験のあるImocaのトップセーラーです。ヴァンサンとは交流があり、そんな彼が乗った船とソレント海峡を舞台に走り比べをした時間はとても楽しいものでした。ほぼ同じ風速・風向の条件下で船の速度差が殆ど無いという事が分かったのも良かったです。ワイト島を超えたあたりで、エクスペディションでのルーティングを行いました。この時点で判明したことはとても受け入れがたい事実でした。というのも、予約してある帰りの飛行機に絶対間に合わないという事が分かったのです。そこでリタイヤしかないという話になりました。私たちはプロセーラーでもセーリングで生活をしているわけでもないビジネスマンなので、何を優先するかという点で選択に迷う余地はありません。そこで、どこまで帆走るのかという事になりますが、気分としてはランズエンドまで行きたいという気持ちに駆られたのも事実ですが、その先の行程を考えた時、飛行機に間に合わない事を理由にリタイヤを決めたのにもかかわらず、ギリギリまで足を伸ばした結果、帰国が伸びるという最悪のリスクがあるという判断を下し、先に進むことを断念をしました。ワイト島をクリアした直後にフランス寄りに舵を切ったのはそういった事情があったためです。ちょうど潮もよくガンゼ諸島に向けて船を帆走らせる事ができました。

お二人から児玉理事へのご報告の様子

ガンゼから先は庭のようなものなので、一路ロリアンに向かったのですが、ブレストまで船を進めたところで事件が起きました。カスタム(海上国境警察?or税関当局?)の巡視艇からの呼び声がかかりましたが、フランス人による「KIHO」の発音が日本のそれとは異なるため、正確に聞き取れず、フランス語がわからない私たちにとって呼びかけられているか判断がつきませんでした。もしかして?という雰囲気の中、いくつかのコールに反応をせずにいたところ、巡視艇の乗組員(海上国境警察官?or税関当局?)は貴帆をあやしい船と判断し臨検を実施することにしたのです。臨検では搭載書類一つ一つの検査があり、その中で大きな見解の相違が生まれました。私たちの船は日本船籍艇という事で、18ヶ月に一回フランス国外に船を出して戻ってくるという事をしなくてはいけない制約があります(諸々複雑な説明が必要ですが割愛)。ロリアンのカスタム(税関当局)と相談し、法令遵守で対処していたのですが、ブレストの当局とロリアンの当局との見解が異なっていたため、貴帆は18ヶ月を過ぎた段階で国外に出ていないという解釈がされてしまったのです。その場合は、その場で船に対する付加税(仮に船が6,000万円ならばその20%=1200万円)を支払う必要がありました。もしくは支払うまで船の差し押さえというピンチに追い込まれました。他の日本人がフランスで同じケースに合う事もあるかと思うので、良い経験になったとは思いますが、JORAスタッフが全力で意図的な脱税を図っていない事、ロリアンの税関当局との確認を行った上で対応していた事、今までの活動経緯、あらゆる情報をかき集め、ブレスト側の責任者と議論しました。言語的問題も含めて、この時はJORAの体制が非常に有効である事を改めて確認できたシーンとなりました。

一足先に帰国する塘内さんを見送るJORAスタッフ

結果としては、お互いの相違を埋めるための妥協策(取引)として罰金500ユーロの支払いで無罪放免(船の入国記録を新たに更新=次回の出国期限を18ヶ月延長)となりました。罰金という対処はまだ不本意ですが、改めて遠隔地まで航海する時間と費用を考えれば良策と思い、そのような解決策をとりました。この出来事はブレスト沖の朝に始まり、解放されたのはすでに夕方になっていました。夕方からロリアンに向けて帆走り出しました。このロリアンまでの行程ではレースリタイヤのため練習できなかったソロのダウンウィンドのトレーニングをしながら戻りました。ほぼほぼ順調にロリアンに到着し、取り急ぎ相棒は空港に移動。船を早々に片付けて一旦の解散となりました。私はロリアンに数日間は残り、船の片付け・整備・次のレースに向けて備品確認を済ませたのち帰国の途につきました。ヨーロッパのレースは全て完走をしてきましたが、船の故障でも人的負傷でもないという何とも不思議/奇妙なリタイヤという結果となってしまいました。これも良い思い出かという事で捉えています。また次のレースに向けて淡々と準備しようと思っています。

スタート前の北田氏&塘内氏(撮影:JORAヨーロッパスタッフ櫻田氏)

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北田氏は今月3日より渡仏、11月にスタートするシングルハンドレースLa Route du Rhum-Destination Guadeloupeへの挑戦に向け準備を進めています。
JORA でも情報を発信していきますのでお楽しみに!
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