守屋有紗のRoad to Ocean Sailor vol.7【長期ダブルハンド外洋トレーニングへの出発とアクシデントの発生】
こんにちは。守屋有紗です。
今日は10日間のダブルハンド外洋トレーニングへの出発の様子と、途中で発生したアクシデント、その結末についてお届けしたいと思います。
長期外洋トレーニング、ドキドキの初挑戦です。是非ご覧ください!
■7/10(土)
いよいよ、10日間のダブルハンド外洋トレーニングの出発日です。
スーパーで、りんごやバナナ等の買い出しを行った後、積み込みです。
パトリシアの息子のマティアもお見送りにきてくれました。
いざ出発!
ペップもお見送りに。
真っ青な青空が広がる、最高の天気です。
期待と不安でいっぱいの出発でしたが、この青空の下でセーリングをしていると自然と笑顔が溢れます。(この時はこの後トラブルが起こるとはつゆ知らず…)
段々と離れる陸
この後、ジェネカーを上げますが風向が変わりジブへと再変更。
スペインの大西洋沖に向かって南西へと走らせます。
風向は西、風速は15ktから20ktまで上がっていきました。
1,2時間も進むと、大西洋からの波が強くなっていきました。
波に叩かれ、思うように上手く走らせることができません。
艇速を落とさないように、ヘルムを取ってひたすらに練習をしていきます。
2m程の波とうねり、上らせ過ぎると叩かれ、下らせ過ぎると目的地から離れてしまう。
とても難しいですが、試行錯誤を繰り返し、練習していきました。
少しずつですがスピードを落とさないように走らせることができてきたかと思います。
夢中でヘルムの練習をしていました。気がついたら、朝出発してから6時間以上経っていました。
トイレや軽食を抜くとほとんどぶっ通しでしたが、体感としては本当にあっという間でした。
北田さんに交代して休憩
と、ここまでは順調….でしたが….
パンを食べた後、40分ほど船内で仮眠し、デッキに上がりました。
激しく揺れる船内、寝ている間に船酔いしていたようで、気持ち悪くなりかけて酔い止めを飲みました。(寝る前に飲んでおけばよかった!泣)
揺れる船内
夜間に吹き上がるのに備えて、ステイセルアップの準備をすることに。寝起きでさらに船酔い気味だったので、北田さん主導でセットをしてもらいました。
ここでトラブルが起きます….
ステイスル展開後、ジブをファーリング(回収)するために、私は下側でジブシートを緩めていたところ、ぶわっとステイスルが海へ落ちていくのが見えました。私はハリヤードが切れた、と叫びました。
まずは緩めていたジブシートを固定し、艇を風下へ向けて安定させ、ステイスルの回収です。(北田さんはいたって冷静。私1人だと焦ってたかな。)
タックとクリューが固定されていたので海に落ちたセールはスムーズに回収できました。
北田さんから小さく畳んで船内に入れようとの指示。
波で揺れるデッキの上で、2人がかりで畳もうとしますが、バテンが入っていて綺麗に畳めない…バテンを抜こうとするも、ポケットが縫われてて簡単に抜けない仕組み。
なんとか工夫し小さく畳み、縛ってバッグに入れることができました。
1人だったらとにかく回収したセールを船内に突っ込んできただろうと思いましたが、ロングレースであれば、その後も船内で過ごすことを考えて対応しないといけないと今回の経験で学ぶことができました。
ステイスルが落ちた原因は、ハリヤードロックのシステムに問題があるようでした。
こちらは今シーズンにシステムを変えたばかりとのことで、修理時に問題があったようです。
先週テストした際は10ktの風だったので問題なく上がりましたが、今回の20kt弱の風では耐えられなかったようです。
ただ、このハリヤードは、ストームジブとステイスル共通で、本来は30ktや40ktの強風時でも使えないといけないもの。20ktで外れるようでは問題です。
今回のトレーニングとしては、ステイスル、ストームジブを使用できない状態では、継続は危険と判断。また、来月にはこの船でのレースも控えているため、まずはしっかりと整備をするためにハーバーバックすることになりました。
後日確認したところ、ハリヤードロックに付いているハリヤードの結び目が外皮だけで作られており、強度が足りずロックの部品から抜けてしまったとのこと。ノットを作り直してもらい、無事に適切な状態にすることができました。
ステイスルの片付けが落ち着いたら、帰る方向に船首を向けます。出発してから約9時間、20時半頃になっていました。安全に帰ることを重視し、メインの1ポイントリーフを入れます(セールのサイズを小さくしてパワーダウンさせます。)
風向は北西へ回っており、ハーバーまでアビームで一直線でした。
帰るとなると貴重な練習の機会、引き続きヘルムの練習をします。横からの波の受け方も難しく感じました。斜め前や斜め後ろからも波が来て、何が正解か分からないながらも色々と試して進みます。
こちらは日の入りが22時頃なので、それまでずっと明るいです。
日が沈んだ後も、深夜0時頃まで明るかったです。
360°水平線に囲まれた中で、ゆっくりと日が沈む様子は、本当に綺麗でした。今まで見た夕日の中で一番だったかもしれません。
空が淡いグラデーションに包まれます。
夜中に綺麗な夕焼けを見ながらのセーリング。幸せを感じながら進みます。この景色を見て、行きの上りの苦しみは吹き飛びました。
また30分程仮眠を取った後、デッキに上がると満点の星空。
陸の光がなく、またこの日は新月だったため、海面近くまでプラネタリウムのように空一面に星が広がっています。天の川も見えました。
なんて綺麗なんだ…
私がずっと見たかった景色です。
再びヘルムの練習に戻ります。星の明るさにより、真っ暗闇という訳ではなく、空と海の境目は分かります。
灯台の光がぽつぽつと見えますが、暗い中の光は距離感がなかなか分からないため、海図やAIS(他船の位置や進行方向が分かる)を確認しながら進みます。
夜の船内
夜中2時頃、眠気のピーク。眠い時はどうすればいいんだろう。とにかく口を動かしてみて目覚めさせようとしました。
変だけど、暗闇だし、一人だし、変な顔しててもいいでしょう(笑)
もっと眠くなると、ガムやカフェインゼリーで強制的に目覚めさせることが必要のようです。過酷なスポーツだ、、
今回は、数時間ハーバーに向かって帰るだけと思うと、練習したい気持ちの方が強く、なんとかカフェインの力は借りずに済みました。
夜中に風が上がったため、メインの2ポイントリーフをしました。
陸に近づく頃には風が落ち、5kt程度の向かい風になりました。
無事に着艇。トレーニングの後、係留するハーバーを移動させる予定だったため、夜は一旦元の場所へ係留し、翌朝艇を移動させることに。
荒波続きでちゃんとしたご飯も食べられていなかったため、船内にある食料を食べました。すごくお腹が減っていました。
自分で握ってきたおにぎりが最高に美味しく感じました。
船内に泊まり、爆睡。穏やかな船内にありがたみを感じました。
翌朝、休日返上でPatrizia が駆けつけてくれ、ハーバー移動や整備の準備などの手配を手伝ってくれました。さすが貴帆のスーパーマネージャー。頼りになります。
<まとめ>
今回はトラブルにより、合計約100マイル、1オーバーナイトと、予定よりも短期間のセーリングとなってしまいましたが、私にとってはとても勉強になる機会となりました。
1番の学びは、外洋の波のある中でのセーリング、特にアップウインドでは、船内での動きがとても難しいこと。どこかに掴まったり、体をどこかに預けないと立っていられません。掴まる場所、体を安定させる場所を自分で見つけることや、船内の改良をしていく(貴帆の場合は既に色々な工夫がされている)ことが大切だと感じました。
また、慣れない内は、船内にいたらすぐに酔ってしまうため、船内での作業が最低限の時間で効率よくできることが必要だと感じました。船内のどこに何をどの向きで置くか、カバンの中の物の配置ルールをどのようにするか等、本当に考えられた工夫が必要だと感じました。
今回の経験では、平らな海の上では気付けなかった多くの学びがありました。学んだことを早速実践し、次の航海に活かしていきたいと思います。
この後は艇をメンテナンスし、再び練習を行いました。詳細は次回以降のブログにて…
本日も読んでいただきありがとうございました!
〈おまけ〉
出航前に寝床の確認。ビーンバックの上で寝ます。寝心地よい◎
守屋有紗(もりや ありさ)
1996年生まれ
大阪府大阪市在住
【活動記録】
ショートコード
このシリーズの全ての記事は、下記リンクでご確認いただけます。
2024/09/06
【World Sailing 認定】サバイバルトレーニング OSR 6.02, 医療トレーニング OSR 6.05臨時開催案内2024/03/17
JAPAN INTERNATIONAL BOAT SHOW 2024出展2024/01/28
小笠原レース「船上のリアル」Part 32024/01/27
小笠原レース「船上のリアル」Part 22024/01/26
JSAF女性ネットワーク「第6回情報交換会」に参加して【吉富愛レポート】